『遠野物語』についてその2 「佐々木さん」

7月がどんどん過ぎ去ってゆく。ああああ。
家のまわりはカメムシでいっぱい!夏こわい!

『遠野物語』についてもうちょっと書かなければならぬ。と自分に言い聞かせている。
頭の中の整理にもなっているので、まだ寝たくないかたはお付き合いくださいね。

今回の公演、『遠野物語』をそのままやるのではなく、『遠野物語』の周辺のお話をメインにやるつもりです。
一応、青山ねりもの協会では、「言葉」について近年色々考えたりなんだりしてきました。その延長で去年の『大鏡』がありました。今回もその延長のつもりであります。金谷個人的にはちゃんとつづいております。
最近では「話すこと」とか「語ること」をちまきの会(青山ねりもの協会の不定期にやる演劇的会合)ではやってきました。『遠野物語』でフィーチャーするのはきっとその部分?

それらについて、なにかを成し得て答えを得た上の公演ではないのだけれど、続いて流れているものはちゃんとあるつもりです。
(原作の時代的には『大鏡』の平安時代から『遠野物語』で一気に大正~昭和の時代になりましたし!久しぶりに現代をやるのももうすぐかと思います。嘘です。)

で、今回『遠野物語』の周辺のお話をやろうと思ったのは、佐々木喜善(ささききぜん)さんと言う人がいたからというのが理由の一つにあります。

前回の遠野物語について1でお話しした通り。佐々木喜善さんは遠野物語の話者です。
佐々木繁さんのお名前で出て来ることもあれば、佐々木鏡石さんというお名前の時もあります。

ウィキさんでは佐々木喜善さんのお名前で出ています。↓

佐々木 喜善(ささき きぜん、1886年10月5日 –
1933年9月29日)は、日本の民俗学者、作家、文学者、文学研究者、民話・伝説・習俗・口承文学の収集家、研究家。佐々木は自身について、資料収集者であり学者ではないと述べているが、一般には学者として扱われる。

なんてことが書いてあります。
この方が、柳田さんに『遠野物語』のお話を語ったのです。

でも、佐々木さんはもともと小説家さんでありました。柳田さんもそうだったように、現代みたいに最初から民俗学者になろう!みたいな時代ではなかったのですね。もちろん。(ていうか、小説家になろう!みたいな発想も明治以後だろうし。)
でも、この方は岩手の遠野出身の方で、幼いころから遠野物語に載っているような話を聞かされて育ったのだそうです。

今回、この方について色々調べて行くうちに、私は何となく、「ヤバさ」を感じました。
なんていうか、その。
言ってしまうと、宮沢賢治と同じような「ヤバさ」です。
(宮沢賢治については言わずもがな?)

現実の世界と幻想の世界が混ざり合う、じゃなくて、そういう区別がない。すべてがすべて等しく現実みたいな状態。宮沢賢治にあるじゃないすか?(ないすか?)
それと同じものを佐々木さんも持っている感じなんですよね。
あれは、なんなんだろう。岩手のヤバさなのか?北国のあれなのか。埼玉の田舎娘には到底説明しきれない。

あああ。この感じを伝えたいが、8月観に来て下さるか、事前にお伝えするには佐々木さんの書いたものを直接読んで知っていただくのが早い…!
青空文庫とかでも佐々木さんの作品は読めます。(『遠野物語』自体も読めるよ!)でも、現在青空文庫にあるのは『東奥異聞』という佐々木さんが集めた昔話をまとめた本のみです。
これでも十分彼のゆらゆらとした「ヤバさ」は読みとれるかと思うのですが、一番はやはり、佐々木さんの小説作品。

一番手に入れ安いのは、
『夢魔は蠢く 文豪怪談傑作選明治篇』 (ちくま文庫)という文豪の怪談アンソロジーの御本かと思います。
そのなかに、佐々木さんの『長靴』という作品が御座います。

春の日のぼんやりとした静けさの中で、靴屋の主人と靴屋で働いている男がいつの間にか眠りに落ち、主人は夢を見ます。
菜の花畑、長靴の葬列、獣の面。そして、夢か現か、大量の長靴が町にやってきて…
みたいな。お話。いや、ホントだから。長靴がいっぱいでてきて大変なんだから。ホントだから。
ああ、全然説明できないから読んで。
(アンソロジーなので他の作家の作品もまとまっております。東雅夫氏の編集ですから!どれもすてきです!東さんほんとうにありがとうございます!ありがとうございます!)

ともかくも、なんだか、夢と現の間で生きているような人。というのが佐々木さんの印象です。

佐々木さんの作品自体はたくさんあります。しかし、やはり、量的に、収集した昔話・民話などの出版物の方が多いです。
何故かと言うと、そこに柳田さんが深くかかわっていて、佐々木さんに積極的にそういうものを収集することを仕事(あるいは学問)として進めたのは柳田さんその人でありました。
佐々木さんの昔話・民話などの出版物の一部は柳田さんを通じて制作されたものもあります。中には、柳田さんが全部ゲラチェックをして、時には全部直させて制作されたものも。

柳田さんはあくまで外の目線でそれを見ていて、
佐々木さんはそれを現実としてみていて、
柳田さんはそれを民俗学としたくて、
佐々木さんはそれをあくまで物語としたかった。

みたいな、両者それぞれの想いが実は『遠野物語』の裏には隠されています。
そういうところをやりたいなと少し思いましたので、遠野物語 ―super IHATOV
remix!!!―では、『遠野物語』の周辺の話が色々入ってくるかと思います。
でも、『遠野物語』の中の話もやる予定だよ。

そして、もっと言うと、佐々木さんと柳田さんをめぐる人間関係は私個人的にはよだれ出ちゃうくらいヤバい。
ヤバい奴らが勢ぞろいなので、その人たちも全部混ぜてみようと思いました。
だから、『遠野物語 ―super IHATOV remix!!!―』

IHATOVの単語からお好きな人はお分かりのように、宮沢賢治さんも混ざる予定です。
いや、無理に混ぜたわけではなく、

佐々木さんと宮沢賢治さんはお友達なのだそうです。

ヤバいでしょ?ヤバくない?
だめ?だめか…。

じゃあ、もうもう長いので、また次の機会にお話しさせてください。

あ、そういうえば東北の妖怪は「もうもう」って鳴くんだって。 もうもう。

今日のお口直し?はこちら。

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やだ、またかき氷食ってる!!!
夏こわい!!!

金谷

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